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ヨーロッパ直送・外資系ビジネスマン兼作家のブログ


by stevebrussels
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ミメント・モリ

「半落ち」で死について考えたので、死生観に関する有名なラテン句を紹介したい。

● ミメント・モリ(memento mori)・・・わたしの苗字にも似ているので、覚えやすい。辞書には「死を想え」とあるが、よくわからない。直訳すると、「人はいつか死ぬ、ということを忘れるな」となる。こちらのほうがわかりやすいだろう。

この前も書いたが、日本の社会問題の多くは、この点を忘れていることに起因しているような気がしてならない。かつて人は家で死んだ。だから死は生活の一部だった。誰もが死とは何か、ということを、自分なりの感覚で掴んでいた。だから、人は「生」を大切にした。だが、今の日本社会において、死は特別なことになってしまった。決して日常生活の一部ではない。子供にとっては、ゲームやテレビの世界のことになりさがり、その結果、生(死)を蔑ろにするような犯罪行為が増加した。

● なお、このコトバと密接なつながりがあるのが、Carpe diem. である。英語に直訳すれば、Seize the day. となる。日本語の辞書には「人生を楽しめ」とあるが、そんな一語にまとめられるような代物ではない。もっと含蓄の深いコトバである。

まずは有名な聖書句の"eat, drink, and be merry, for tomorrow we die." が背後に見え隠れする。

さらに、古代ローマの詩人ホラティウスが見えるだろう。Nunc est bibendum, nunc pede libero pulsanda tellus. (Now is the time to drink, now the time to dance footloose upon the earth.) 彼が強調したかったのは、現世でしか酒も踊りもできない。死後の世界ではそういう楽しみはない、という点である。だから、「今を精一杯生きよ、楽しめ」となる。

そういう意味ではNow or never. 今のチャンスを逃せば、二度とこのチャンスはない、というコトバにもつながっていくだろう。

● ちなみに、享楽主義はhedonismといい、そういう主義の人をhedonistという。ジャマイカはAll-inclusive(飲み・食い・アクティビティーの値段がすべて含まれたホテル)の先駆国だが、20年前くらいに訪れた宿でHedonismという名前のホテルがあった。酒も飲み放題、食事も食べ放題で、バーでは、タバコや葉巻も吸い放題。エンターテインメントも、インターアクティブ(宿泊客を参加させる)エロチックなゲームばかりが繰り返されていた。タバコも葉巻も吸わず、酒もあまり飲まない私には、もったいないホテルだが、好きな人にはたまらないだろう。

話がやや脱線してしまったが、わたしは何かに迷うとこの二つのラテン句を思い出す。すると、常識というしがらみに囚われることなく、正しい選択ができるような気がするからだ。
by stevebrussels | 2006-07-18 06:28